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TV向け第8世代QD-OLEDへの投資額は?

最近、UBI Researchが発行した『AMOLED製造・検査装置産業レポート』では、Samsung Displayが開発を始めたQD-OLEDへの投資額がどれくらいなのかを分析した。

Samsung Displayが目指しているQD-OLEDは、青色OLEDから放出される光が量子ドット(Quantum Dot、QD)材料を通って緑色と赤色に分離され、RGBの3色を実現する方式で製造される。QD材料を通り抜けた光は、再びカラーフィルターを通り、さらに豊かな色を表現できるようになる。

このようなQD-OLEDの製造方式は、LG DisplayのWRGB OLEDと似ている部分が多い。まず、TFTは2社ともにOxide TFTを使用している。WRGB OLEDは青色が2回塗布され、その間に赤色と緑色が蒸着される。それに比べ、QD-OLEDは青色材料のみ2回蒸着して製造される。蒸着用マスクは、両方ともオープンマスク(Open Mask)を使用する。

QD-OLEDとWRGB OLEDのカラーフィルターの製造費は同様であると考えられるが、QD-OLEDの場合、QD材料をコーティングする装置を追加導入しなければならない。

本レポートによると、モジュールとセル、封止、蒸着装置は、同じ装置が使用される可能性があり、投資額もほぼ同様になると予想される。しかし、WRGB OLEDは背面発光方式のため、TFTを含めたバックプレーンを製造する際に同時に形成される反面、QD-OLEDは前面発光方式のため、上部のガラス基板にカラーフィルターを個別に形成し、その上に再度QD層をパターニングして製造する。その結果、QD-OLEDにはWRGB OLEDより高い投資額が必要となる。

第8世代の26Kを基準に投資額を計算してみると、QD-OLEDは11億米ドルで、10億7,000万米ドルのWRGB OLEDに比べて1.03倍高くなることが見込まれる。一方、JOLEDが事業化を進めている印刷方式OLEDの製造に必要な投資額は8億8,000万米ドルで、QD-OLEDの80%程度になるとみられる。

プレミアムTV市場をリードする 大面積OLEDへの投資額は?

■ WRGB OLEDとソリューションプロセスOLED、QD-OLEDへの投資額を比較分析
■ 2018年から2022年までのOLED製造装置市場は588億米ドル、検査装置市場は84億米ドル規模になる見込み

最近、プレミアムTV市場ではOLED TVのシェアが拡大を続けている。OLED TVは、WRGB OLEDにカラーフィルターを採用した構造で、現在は唯一LG DisplayがOLEDパネルを量産している。

そこで、Samsung DisplayはプレミアムTV市場でWRGB OLEDに対抗するために「青色OLED + 量子ドットカラーフィルタ(Quantum Dot Color Filter、QDCF)」を開発していると知られている。青色OLEDはOLEDから発される青色光が量子ドット層とカラーフィルターを通り抜け、赤色と緑色を実現する技術である。

<QD-OLED構造の予測>

UBI Researchは、先日6日に発行した『AMOLED製造・検査装置産業レポート』で、最近注目を集めているWRGB OLEDとQD-OLEDの構造や投資額を分析した。さらに、大面積OLEDでReal RGBを実現することができるということから、関心が高まっているソリューションプロセスOLEDへの投資額も分析し、比較を行った。

第8世代の26Kを基準に、装置への新規投資額を分析した結果、QD-OLEDへの投資額はWRGB OLEDと比べて3%高く、ソリューションプロセスOLEDへの投資額はWRGB OLEDより19%低いことが確認された。

QD-OLEDへの投資額には、個別に形成されたQDカラーフィルターを貼り合わせる追加工程に関する内容が、またソリューションプロセスOLEDへの投資額には、QDカラーフィルターが取り除かれたことや、蒸着装置の代わりにインクジェットプリンターが導入された内容が反映されている。

他にも、2018年から2022年までのOLED装置市場全体の予測も提供している。同期間中の市場規模は、1,067億米ドルに達する見込みで、そのうち製造装置は588億米ドル、検査装置は84億米ドルになると予想される。

<2018~2022年のOLED装置別市場シェアの展望>

青色OLED、WRGB OLEDの競争相手として急浮上

プレミアムTV市場でOLED TVの占有率が増加し続け、LCDとの価格差も次第に縮小していく傾向にあり、量子ドット技術を取り入れたLCD TV(QD-LCD TV)メーカーはプレミアムTV市場で苦戦している状況だ。

OLED TVは白色OLEDとカラーフィルターを用いたOLEDパネルを採用しており(以下、WRGB OLED)、唯一LG Displayが量産している。Samsung Displayは、プレミアムTV市場でWRGB OLEDに立ち向かうための技術の一つである青色OLED + QDCF(以下、青色OLED)を積極的に開発していると知られている。

UBI Researchは先日18日に発刊した『2018 OLED発光材料産業レポート』で、Samsung Displayが前面発光方式で青色OLED + QDCFを実現すると予想し、WRGBと比べて8K解像度とBT.2020を満足するにあたって有利になると分析した。

<青色OLEDの予想スタック構造、2段スタック構造(左)・3段スタック構造(右)2018 OLED発光材料産業レポート、UBI Research>

8KとBT.2020というTVのトレンドとSamsung Displayによる青色OLEDの開発に伴い、青色材料に関する開発も積極的に行われる見込みだ。現在、OLEDに採用されている青色材料は、蛍光物質として赤色と緑色に採用されているりん光物質より効率と寿命が低下している。青色りん光材料の開発も続いているが、材料の希少性と技術の壁があり、まだ量産には使われていない状況だ。大面積OLEDパネルには蛍光青色材料を2回以上積層することで、効率と寿命を向上させるスタック構造を導入しており、青色OLEDも2段スタック以上の構造を取り入れると予想される。

このような傾向から、青色発光材料市場も成長が続く見込みだ。2017年の青色材料(ホストとドーパント)の市場は7,000万米ドル規模に成長した。UBI Researchが発刊した『2018 AMOLED Emitting Material Market Track』によると、青色材料は2022年まで年平均32%で成長し、2億7,200万米ドル規模に達する予定だ。

<青色材料(ホストとドーパント)市場展望、2018 AMOLED Emitting Material Market Track>

青色OLEDはOLED TVに使用されるのか

Samsung DisplayはLCD TVに続く次世代ディスプレイ技術として、青色OLED+QDCF(以下「青色OLED」)を選定し、開発に乗り出した。

青色OLEDはOLEDから発光された青色光がQDCF(Quantum Dot Color Filter)を通り抜け、赤色と緑色を表現する技術である(b)。OLED TVに採用しているWRGB OLEDは、白色光がカラーフィルターを通り抜けてRGB色を実現する方式である(a)。

UBI Researchが先日18日に発刊した『2018 OLED発光材料産業レポート』では、Samsung Displayが開発を開始した青色OLEDが、TV用OLEDパネルになれるかを予想した。青色OLED+QDCFの開発方向性と要求性能(効率と寿命)について分析を行い、特に青色OLEDの主要な材料である青色発光材料の現況と開発進捗状況(蛍光・りん光・TADF)を取り上げている。

Samsung Displayの青色OLEDは前面発光方式であるため、TFT方向に光を出す背面発光方式に比べて開口率が約70%増加し、従来のWRGB OLEDより8Kの解像度と高輝度の実現が容易である。また、色再現率の高いQD材料をカラーフィルターとして採用し、2012年に国際電気通信連合会(International Telecommunication Union、ITU)が制定したUHDの色域規格BT.2020に近づけると予想される。

今後プレミアムTV市場において、8KとBT.2020はディスプレイの必須条件で、WRGB OLEDも8KとBT.2020を実現するために積極的に開発を行っている。青色OLEDがWRGB OLEDがリードしているプレミアムTV市場で、どのような影響を与えるかのに期待が集まる。他にも、Soluble OLED材料とNear IR(近赤外線)材料など、新規材料の技術開発動向と重要事項を取り上げている。

QD-OLED TV、次世代プレミアムTVになれるか

Samsung Electronicsは現在「PL-QD(Photoluminescence Quantum Dot)技術」を採用したQD-LCD TVで、プレミアムTV市場で影響力を強めている。この技術は外部の光によって刺激される物質が再び発光するメカニズムを有する。

 

このようなQD-LCD TVを担当する家電部門(CE)において、昨年の営業利益は1兆ウォン以上落ち、営業利益は3.6%に留まった。

 

一方、LG Electronicsのホームエンターテインメント(HE)事業本部は、昨年OLED TVで営業利益1兆5,667億ウォン、営業利益率8.1%の過去最高値を更新した。SONYもOLED TVを前面に押し立て、プレミアムTV市場で急速に立地を進め、営業利益を黒字に転換させた。

 

OLED TVが企業の売上向上への貢献効果を生み出したと言える。

 

これに対し、Samsung ElectronicsはプレミアムTV市場に占める割合を高めるために、EL-QD(Electroluminescence Quantum Dot)技術を採用したEL-QLEDの開発に取り組んでいるが、QLEDの材料であるQuantum Dotの効率と寿命、量産技術はまだ確保されていないようだ。

 

最近青色OLEDを照明パネルとして採用し、その光がQDCF(Quantum Dot Color Filter)を通り抜け、赤色と緑色を実現するQD-OLED TV技術が注目されている。

<QD-OLED構造予測、参考:Samsung Displayブログ>

QDCFを用いるとQD材料のサイズを調整し、実現したい色を簡単に作リ出すことができ、色再現率の向上も可能となる。これによって、色の領域をBT2020まで拡大し、自然な色に近くより鮮明でリアルな画質を提供することができると見られる。また、QD-OLED TVは前面発光構造で、開口率を確保することが容易であるため、解像度と画面の均一度を向上させることもできる。

 

しかし、QD-OLED TVには青色OLEDの寿命と効率、インクジェットプリント工程技術の確保など、これから解決しなければならない様々な問題点がある。これに対し、業界では事業検討がまだ初期であることを鑑みると、QD-OLED TVの量産時期は2020年以降になると予測している。

 

QD-OLED TVがプレミアムTV市場に参入し、どのような変化の波を起こすのかに注目が集まる。

OLEDと競い合う次世代ディスプレイは?

先日の14日に開催されたUBI Research主催の「最新ディスプレイ及び車載用ディスプレイ技術動向」セミナーで、次世代ディスプレイとして注目を集めているマイクロLED、QLED、ホログラムなどについて発表が行われた。

 

韓国順天郷大学のムン・デキュ教授は「マイクロLEDディスプレイ技術と市場現況」をテーマに「マイクロLEDは、高解像度を実現するだけでなく、パネルの形とサイズに制限されないため、曲面(Curved)ディスプレイやフレキシブルディスプレイを実現しやすい。また、マイクロLEDをディスプレイに採用することで、小さい基板でも高解像度を表現できるので、VRなどにも採用できる。 公共ディスプレイに採用する場合、複数のディスプレイパネルをつなぎ合わせる従来のタイリング方式から離れることができる」と見込んだ。

 

しかし、数百個のLEDチップを速やかで正確に移送し、調合する問題とLEDチップ間の色と発光効率の差、ディスプレイに採用する場合のアクティブマトリクス(Active matrix)の実現など、技術的な問題がまだ残っていると説明した。

<順天郷大学のムン・デキュ教授>

引き続き、韓国科学技術研究院のファン・ドキョン博士とペ・ワンキ先任研究員、電子部品研究院のオ・ミンソク博士は、量子ドット(Quantum Dot)の製造原理とこれを用いた自発光QLEDの可能性を紹介した。ファン・ドキョン博士は「量子ドットは大きさによって、自由自在に色を変更し、半値幅が狭いという利点を持つ。自発光QLEDは、OLEDより色純度が高いディスプレイを実現することができる」と説明した。

 

ペ・ワンキ先任研究員は「現在、量子ドットの効率は向上し続けているが、寿命はOLEDより短い。企業などの大規模で研究を進めたら、技術発展も加速していく」と述べた。

 

オ・ミンソク博士は「LCDとOLEDの後を次ぐ次世代ディスプレイ技術が必要となる。現在、QLEDが次世代ディスプレイとして大きな注目を集めているが、発光材料の開発にしか集中しないという問題、溶液工程関連材料、技術不足、非カドミウム系の高校率青色発光材料の開発など、様々な争点がある」と述べた。

<電子部品研究院のオ・ミンソク博士>

ついて説明し、ホログラムを実現するためには、これを表現できるディスプレイが必要となると強調した。また「現在、ホログラフィックプリンターや顕微鏡があるが、TVに採用するにはまだ技術力が足りていない。先にホログラム用フィルムを開発した後、画面を実現する機能設計を必ず行わなければならない」と語った。

 

次世代ディスプレイについて発表が続く中、ほとんどの講師が技術的な問題の解決とディスプレイの実現に向けた学校、研究所、企業の協力と参加の重要性を強調した。代表的な次世代ディスプレイとして浮上しているマイクロOLED、QLED、ホログラムに関する研究開発が本格化することで、ディスプレイ業界では、今後の市場をリードするための競い合いが一層激しくなる見込みだ。

Samsung Electronics、OLEDがディスプレイ全体売上高の6割を占有

韓国Samsung Electronicsのイ・ミョンジンIR担当専務は、4月27日に行われた2017年第1四半期電話会議で「第1四半期の総売上高が約5兆500億円(50兆5,000億ウォン)となった」と発表した。また、「Samsung Electronicsにおける第1四半期総売上高のうち、ディスプレイ部門は約7,290億円(7兆2,900億ウォン)、営業利益は約1,300億円(1兆3,000億ウォン)だった。OLEDの売上高は、第1四半期ディスプレイ全体売上高の6割を上回った」と述べた。

 

Samsung Displayのイ・チャンフン常務は、ディスプレイ市場について「第2四半期は、セットメーカーによるOLEDパネルの採用が増加し続けると見込まれており、Samsung Electronicsは主要顧客にフレキシブル製品を供給し、外部顧客にも積極的に対応しながら実績を維持していく」と語った。また、2017年OLED市場については「フレキシブル製品の供給拡大により、前年比の売上高が増加すると予想される一方、中・低価格帯の市場でLTPS-LCDとの競争が激しくなり、リスクを受ける可能性がある」と見込んだ。

 

Samsung Electronics映像戦略マーケティングチームのイ・ユン常務は「TV市場の第1四半期実績は、年末シーズン以降には季節的にシーズンオフ時期に入り、市場需要は前四半期比減少し、ヨーロッパと中南米による需要減少の影響を受け、前年同期比マイナス成長がと予想される。第2四半期のTV市場実績は、各メーカーの積極的な新製品発売により、前四半期比小幅に成長すると予想されるが、ヨーロッパを中心とした消費減少の影響で、前年同期比マイナス成長する」と見込んだ。このような市場見通しの中で、量子ドット(Quantum Dot)QLED TV製品の販売と共に曲面TV(Curved TV)と超大型TVなど、高付加価値製品のラインアッププ拡大による収益性確保に注力すると付け加えた。

 

続いて行われた質疑応答時間では、Samsung Electronicsにおける今後OLED全体の生産ラインについての質問に「LCD7-1ラインは、2016年の末からOLED生産ラインに変更しており、OLED A3ラインも計画通りに進んでいる」と述べた。

 

OLED TVに関する質問には「QLED TVはOLED TVの欠点を解決し、デザイン、画質、消費者のライフスタイルに対応する別次元の製品だ。メタルが含まれている量子ドット材料を用いて、世界初で唯一の明るさによって色が変わらないカラーボリュームを100%実現し、画質問題を解決した」と語った。

 

最近、Galaxy S8とS8+の部品供給が遅れていることについては「各メーカーと事前に契約を締結しし、初期供給に問題がないように努力しており、現在も初期供給に支障が生じないように対応している。他の部品も受給問題が起きないように二元化して運営している」と述べた。

 

最後に、Samsung ElectronicsのOLED TV開発について「OLEDだけでなく、TVにも採用できる様々な技術を開発しており、量子ドットを含む次世代技術の開発に集中している。また、様々な新技術を取り入れ、独自の製品開発、超大型と高付加価値製品群で市場支配力の強化、収益性確保に注力する」と明らかにした。

QLEDへの積極的な投資、QLED商用化への近道

10月14日、ソウルの中小企業会館で開催された「QLEDとソリューションプロセス(Solution Process OLED)の市場進出可能性に対する分析セミナー」でソウル大学のイ・チャンヒ教授と韓国セラミックス研究院のバン・ジウォン先任研究員がQLEDの現状況と開発動向、争点について意見を共有した。

ソウル大学校のイ・チャンヒ教授

イ・チャンヒ教授は、QLEDがOLEDより半値幅(FWHM)が20〜30nm程度狭く色純度が高いし、製作時の精度も高いレベルだということから色再現性で有利だと言いながら、現在のQLED用発光材料の効率がOLEDを追いつくほどの一定レベルまで到達したと明らかにした。しかし、QD(Quantum Dot)発光材料の寿命に対する安定性確保と重金属物質であるカドミウム(Cd)を使用しないCd-free QLEDの技術的な問題を核心争点として言及し、「業界でどれだけの資金と人材投資規模によって、商用化時点が5年、3年早まることも有りうる。」と言いながら、QLEDへの投資が商用化への近道であることを強調した。

セラミックス研究院のバン・ジウォン先任研究員

韓国セラミックス技術院のバン・ジウォン先任研究員もQLED用発光材料の発光効率と安定性(stability)、ノントキシック(Non-toxic)QDについて、共通した意見を明らかにしてから、QDを使用し、blue-LED BLU(Back Light Unit)にQD CCL(Color Change Layer)を適用したQD-LCD、WOLEDにQD CCLとC/F(Color Filter)を適用したOLED、blue-OLEDにC/FなしでQD CCLを適用したOLEDなど、QD 材料を活用して様々な方向から接近していることを発表した。

このように、QLED関連学界でQLEDの可能性を積極的に論議したことに対し、ユービー産業リサーチのイ・チュンフン代表は、QLEDと関連し、「QLEDが開発されているだけにWOLEDも開発に努めることとなり、WOLED技術が今のボトムエミッション(bottom emission)方式からトップエミッション(top emission)方式に進化し輝度がさらに向上することになれば、QLEDはプレミアムTV市場への進入がますます難しくなるだろう。」と言いながら、「新しい技術が市場に進入することができる場合は、商用化されている技術と比較し、性能と効率、コストなど、どのような面で新たな技術が良いのかを検討してみなければならない。」と発表した。

[IFA2016] サムスン電子のテレビ展示、コンセプトは?

「IFA2016」に設けられたサムスン電子のテレビブースは従来とは非常に違ったところがある。
現在市販されている液晶テレビには、LEDバックライトを使用する既存のテレビと、量子ドットシート(quantum dot sheet)を使用するSUHDテレビの2種類がある。ところが、当社ブースで広い展示エリアを占めながら紹介されている製品は、まだいつ世に出るか分からない量子ドットディスプレイを使用する「inorganicテレビ」。

サムスン電子が実物のテレビ製品に代わって紹介した概念的な「inorganicテレビ」は、有機ELテレビより遥かに優れた性能をもつ製品だ。有機ELテレビを表す「organic」は時間の経過とともに輝度が急激に低下し、テレビとしての機能を完全に失ってしまうが、「inorganic」は殆ど変化がない。これが事実だとすれば、永遠に使えそうな優れた製品だ。

また別の概念展示でサムスン電子は、「Inorganicテレビ」の色純度がずば抜けて優れていることを示した。

「Organicテレビ」の光源から放射される光はRGBがとても曖昧だ。これに対して、「inorganicテレビ」は生まれながらに明確なRGBで始まる。この光がカラーフィルタに届く前から既に「inorganic」は独立した波長と強度を形成しているが、「organic」は色が分離されていない曖昧な光になっている。ここで見られる「inorganicテレビ」の構造は、液晶とカラーフィルタの間に量子ドットを挿入した形になっている推定される。最後に、カラーフィルタを通過した「organic」の光は、青と緑赤が混ざっている2波長の光を3波長の光に変換させたものであるため、三原色の色純度が低いという。これに対して、「inorganic」はカラーフィルタに届く前からずっと色純度の高い光をより強く外へ放している。
この2つの展示内容が事実だとしたら、サムスン電子は実に物凄い次世代テレビを準備していることになる。
問題はこの技術はまだ誕生していない、お母さんのお腹の中にもいない、全くの概念に過ぎないものだというのが、来場者からの指摘だ。何が起きるか分からない未知の世界についてあまりにも正確に堂々と描写するサムスン電子の姿は、逆説的に未来のテレビに対する準備が全くできていないかのように受け取られている。
さらに、有機ELテレビを、現在市販されているSUHDテレビと比較せず、未来のテレビ技術と比較したことで、量子ドットを使用するSUHDテレビより有機ELテレビの方が優秀だということを間接的に認めたことになる。
サムスン電子は「IFA2016」での展示を通じて、SUHDテレビが今後も成長し続けるということをアピールし、近いうちに有機ELテレビは消えるということを示そうとした。だが、現状としては有機ELテレビの方がSUHDテレビより優れているため、未来の「inorganicテレビ」と比較するしかない。返って、その緊迫な状況を自認してしまった。
最後の一言、液晶テレビにどんなことをしても「black」は無理。液晶だから。

[IFA2016]サムスン電子、有機ELテレビと完全決別を宣言!

2014年の「CES2014」において「有機ELテレビはまだ技術が不十分で、さらに3年程度の開発期間が必要とされる」と言及してから2年半が過ぎ、「IFA2016」でサムスン電子は有機ELテレビ事業を展開しないと強くアピールした。
最近サムスン電子は、韓国マスコミとのインタビューで「有機ELテレビはまだ画質に問題が多く、サムスン電子は数年内にQLED(quantum-dot light-emitting diode:量子ドット発光ダイオード)テレビでテレビ事業を継続する」ことを明らかにした。
「IFA2016」でテレビの過去と現在、そして未来がどのようになるかについてサムスン電子の内情を明かした。

サムスン電子のブースで公開されたデータによると、「過去の液晶テレビは現在LEDテレビに引き継がれており、未来には無機材料が使われる量子ドットテレビに進化する」とのこと。さらに、テレビ市場から消えたプラズマテレビと同様に有機ELテレビも湾曲フルHDテレビ程度で消えるということを表した。
この資料からするとサムスン電子は、他の液晶テレビセットメーカーは気にせず、ただLGエレクトロニクスの有機ELテレビにだけ全ての焦点を合わせているように分析される。
実際にテレビ市場でシェア首位の座にあるサムスン電子としては、プレミアムテレビ市場で勢力を拡張しているLGエレクトロニクスの有機ELテレビが目障りで仕方ないはずだ。しかし、55型・65型のUHD有機ELテレビが売れている現在としては、サムスン電子の展示内容は度が過ぎたような気がする。
ライバルに対するネガティブな攻勢はマーケティングとして許されることもあるが、今回の展示では度が過ぎた。挙句の果てにサムスン電子は、まだ存在もしない無機ELテレビ(量子ドットテレビ)と有機ELテレビの耐久性を充実に比較展示することまでした。
有機ELテレビは時間の経過とともに色が酷く変化するが、無機ELテレビは色変化がほとんどないという内容だ。

米国「コンシューマレポート」のサイトには下記の内容がまだ公開されている。2015年の「ベストテレビ5」にLGエレクトロニクスの有機ELテレビが3種含まれ、1位は65型のUHD有機ELテレビとなっている。
有機ELテレビの終末がサムスン電子の思うように早く訪れることはないようだ。有機ELテレビの時代は今から始まる。